直火での焚き火を禁止されているエリアで直火をやってはいけません。
直火がOKな場所であっても、片付けなくてOKな訳ではありません。
というのは今や誰にも文句のないレベルでの常識だと思います。

日本単独野営協会を立ち上げる前、私はソロキャンパーなので一人でゴミ拾いや焚き逃げの片付けをしていました。

「焚き逃げ」という言葉は日本単独野営協会発足後に私が作った言葉なので、当然その当時はそんな言葉もなく、直火が当たり前だった時代(昔から無許可の場所では違法ではありましたが)から、それが正しく問題視されるようになるまでの移行期だった気がします。

キャンプはキャンプをする場所がないとできません。焚き逃げなどの不法行為が横行すると、その場所はすぐに閉鎖になってしまい、自分がキャンプをすることができなくなるだけでなく、自分の子どもや孫、その先の未来までキャンプという文化を自分の代で食いつぶしてしまうことになります。

当時、私が禁止場所での直火による焚き火や、焚き逃げに対する違法性、悪影響についての啓蒙活動を行っていると、決まって古き悪しき「違法直火推奨派の人」や、「焚き逃げ擁護派の人」から「昔から焚き火は直火と決まっていたんだから片付けなくていいんだ!」「親から直火を埋めて帰るように教わった。親が間違っているとでも言うのか!」など、たくさんの批判を受けて来ました。

しかしながら、啓蒙活動を続けていくにつれ認知は広がり、いい焚き火台が登場し、流行し、沢山の人が使うようになり、その影響で直火で焚き火をする人は徐々に減っていきました。
直火の許可があるキャンプ場では直火でいいのですが、直火がOKでも、片付けなくてOKではないので、しっかり片付けられるだけのスキルが必要です。その点、とにかく直火は片付けるのがとても大変です。
一方で焚き火台は、火消し壷のようなものにガサッと入れて持って帰るだけなので、とても楽です。そんな利便性も手伝って、直火は減り、焚き火台が主流になっていったのではないかと分析しています。

そして、その後に発生したのが火災の問題です。
直火は焚き火自体の技術が必要なので、薪の組み方や量、針葉樹と広葉樹の使い分けを細かく調整する必要がありますが、それに対して焚き火台はとても燃焼効率が良くできているので、昨日今日の人でも上手に焚き火ができます。
ただ、その分、どうしても薪を一度に沢山くべてしまう人が多く、輻射熱や爆ぜた炭などで周囲の枯れ草などに火が燃え移り、火災が発生するということが横行しました。
そしてそれを解決するのに一役買っているのがスパッタシートと呼ばれるグラスファイバー製のシートです。
元々は溶接の火花から周囲を守るために作られたもののようなのですが、それを焚き火に応用したところ、少なくとも爆ぜた炭が火元となっての火事は軽減されることとなりました。
私は、焚き火台やスパッタシートなど、次々に出るキャンプギアの存在が、キャンパーが法令などのルールを守ったり、キャンプマナーを守ったりするようになったことに、大きく貢献しているものと感じています。

ただ、一つ問題がありました。スパッタシートにはこれといった遮熱性が無いのです。
なので、薪をくべすぎてしまうと、どうしても地面が丸焦げになったり、炭化した枯れ草から出火したりという事が起きてしまいます。

そこで「ZEN CAMPS」というメーカーさんが開発した「遮熱シート」というものが出ました。
「焚き火台」「スパッタシート」の次となるキャンプギアです。

これは焚き火台の下に敷くとアルミの反射効果で地面に熱が伝わりづらくなるというものだそうです。
ホームページを見ると、確かに実験結果として、かなりの遮熱性がありそうです。
私も手に入れてみました。今後はこういったものを使うことも常識になってくるかも知れません。

こうして、新しいキャンプギアが開発されればされるほど、キャンプによる犯罪やマナー違反などの弊害は減っていくものと考えられます。
そう考えると、昔から比べて焚き火のマナーは何気に年々良くはなっているのです。

今でも「直火はどこでやってもいいんだ!お父さんからそう教わったんだ!」と言っている人がいたら鼻で笑われて終わると思います。
時代は常に先へ先へと進んでいるからです。
昔は「卵を食べるのは1日1個までにしないとコレステロールが溜まって血管が詰まる」とか、「お酢を飲むと身体が柔らかくなる」とか、医学的なエビデンスのないことが当たり前のように言われていました。無論当時はインターネットもなく、情報が乏しいので、私もそれを信じていました。

このように、「今日の常識は明日の非常識」かも知れません。

その時は信じていても、他人に迷惑をかけなければある程度は仕方がないでしょう。ただ、大切なのは、昔の誤った知識や、そうしたやり方を固持することではなく、時代に合わせて自分のやり方、考え方を常に見つめ直し、アップデートしていくことだと思います。

私は各メーカーさんが考えて世に送り出してくれた「キャンプマナーを良くする効果のあるギア」を、これからも推奨していきたいと思っています。
皆様も是非、焚き火台、スパッタシート、遮熱シートなど積極的にお使いください。