「最近の若いものは…」という言葉、昔からよく聞きますが、大正生まれの私の祖母も若い頃はそう言われて育ったそうです。

これは一般的に、お年寄りが若い人を見て、自分の頃は凄くできたかのような錯覚を起こし、若い人の立ちふるまいを憂いて言うセリフなのですが、もし仮にその理屈がまかり通るならば、当然お年寄りだけが優秀で、年々若者はバカになっていっているはずなので、時代が進むに連れ、どんどん優秀な人は減り、原始時代に戻って行く筈なんです。

ただどうでしょう。

大正時代にはロケットが飛んでいましたか。
大正時代に治らなかった病気は治らないままですか。
大正時代にコンピューターやインターネットはありましたか?

時代が進んでも、むしろ優秀になっていくだけで、全く心配に及ばないんです。

つまり、「最近の若いものは…」という言葉は、言い換えるならば、「今の時代についていく能力がない人やなくなった人が、それを自分の能力の問題や自分に対する課題ではなく、若者のせいにして吐く捨て台詞のようなもの。」ということなのではないかと思っています。

実際は時代についていけなくなったことは、自然の摂理であり、そこまで必死になったり気にしたりしなくて大丈夫なんです。

いつの時代もざっくり言うと、優秀な2割の人と、それについていく8割の人で大体世の中は成り立っています。
「最近の若いものは…」というのは、これからの世の中を作っていく優秀な2割に入っていない人が言う事なので、そういう人は、その後の未来を作る人には含まれず、捨て台詞を吐いてまで自分の立場を気にしたり、心配したりする必要は全くないんです。

私が「焚き逃げ」についての啓蒙活動をしていると、似たような人が沢山あぶり出されます。

「焚き火なんてどこの空き地でしてもいいんだ。」
「焚き火は本来直火でやって埋めて帰るものだ。」
「焚き火跡なんか放っておけば自然に還るんだ。」
「昔はみんな直火だったんだ。」

こういうやり方が昔は横行していたからこそ、今になって大きな問題になり、今の世代の人に多大な迷惑がかかっているにも関わらず、どうしても昔のやり方を固持して改善しようとしない。
いろいろな古き悪しき習慣を口にしては、自身が時代についていけなくなった罪を、新しく正しい情報で動いている人々の世代に着せようとします。

「老害」という言葉があります。
私の解釈では、お年寄りを敬う気持ちがなかったり、差別的に老人をディスっている訳ではなく、「若年性老害」という言葉があるように、ただ年齢が高いからということではなく、「自分固有の知識や能力が、世の中の流れについていけず、自分自身をアップデートしていけない人」に使われる言葉だと思っています。

一方で「Z世代」という言葉があります。
人によっては「何を考えているかわからない、やる気のない若者」というイメージがあるかも知れませんが、決してそういう訳ではありません。
頭が柔らかく先進的な考え方をもっているという部分では、物事を合理的に考え、おかしいことはおかしい、無駄なことは無駄だと言える、とても優れた人が沢山いる世代であったりもします。
そして今後、そのZ世代の中の優秀なざっくり2割程度の人が、これからの世界を作って行ってくれます。
私もきっと歳を取ったらそういう人たちの恩恵や支えの中で生きていくことになるでしょう。
その意味ではZ世代を決して頭ごなしに否定するものではなく、若いからと言って、自分の世代の考えを押し付けて理解させようとしたり、無理に教育したりする必要もなく、しっかり同じ目線で向き合うことが大切だと思っています。

トータルして考えると「昔の間違った知識や考え方を正して、新しく未来ある考え方を取り入れていきましょう」ということだと思います。

焚き逃げは犯罪です。
キャンプの楽しみは焚き火だけではありません。
焚き火の方法は直火だけではありません。
他人の土地で勝手に焚き火をしてはいけません。
自分の土地でも火災には気をつけなくてはなりません。
焚き火跡はきれいに片付けなくてはなりません。
焚き火跡のゴミは持って帰らなくてはなりません。
焚き火跡は埋めて帰ってはいけません。
火消し壺を利用するのも大切です。
焚き火台も沢山の種類があります。
スパッタシートを使うことも大切です。
遮熱シートを使うことも大切です。
防火用水を用意することも必要です。
風の強い日は焚き火をしないことも大切です。

こういった、「今の時代には当たり前」とされていることを、「昔はこうだったから今もこうでいいんだ。」という、いわゆる老害的な考え方ではなく、物事を柔軟に、広い視野で見て、後先を考えて、自分が死んだ後のもっと先の未来までキャンプを文化として楽しむことができるように。という考え方がこれからは必要だと思っています。

「最近の若いものは…」に見る焚き逃げ擁護派の人たちに対しては、どうか時代に合わせて正しく知識をアップデートし、少しでも人に迷惑をかけない人になってもらえるよう願っています。