「焚き逃げ」とは、焚き火跡を放置して帰ったり、焚き火跡の炭を埋めて帰ってしまうことを言います。
一般的には、地面で直接焚き火をする「直火」による焚き火が原因とされていますが、使い終わったバーベキューコンロや焚き火台の炭を地面に捨てて帰るのも焚き逃げの一種なので、直火だけが焚き逃げの原因とも限りません。

焚き逃げがいけないことであると伝えると「何でいけないんだ」「いけない理由がわからない」という人が時々います。
酷い時には「自分は焚き逃げをして良いと教わった」「昔は良かった」という誤った認識をしている人もいます。そもそも焚き逃げは犯罪なので、今も昔もやってはいけませんでした。
昔はインターネットもなく、情報が乏しかったということもあり、これから数十年後にその悪影響がどのように出てくるのかが想像できなかっただけなのです。その意味では間違った事を教わってしまったのは気の毒ではありますが、それも時代に合わせて考え方を切り替え、改善しなくてはなりません。
ゴミを放置して帰ってはいけないというのは子どもでもわかることなので、基本的に焚き逃げする人は、それがいけないことだと知っていて食い下がってきているのだとは思うのですが、まだ焚き火をしたことがなかったり、本当に焚き逃げをしてはいけない理由を知らない人のために、ここでしっかりとした理由を説明しておきます。

<焚き逃げをしてはいけない理由>

①そもそも「直火OK」の場所以外で直火による焚き火をしてはいけません。
 →直火での焚き火自体は反対しませんが、その土地の地主や管理者が許可していないところでは直火をしてはいけません。

②「直火OK」の場所でも「片付けなくてOK」ではありません。
 →直火OKの場所でも、焚き火が終わったら元通りにして帰るのがルールです。自身の土地であったり、地主や管理者がそのままで良いと言った時を除いて必ず片付けて帰らなくてはいけません。また、次の人にバトンタッチして帰る場合も、次の人にはちゃんと片付けられるか、片付け方を知っているか確認した上でバトンタッチする必要があります。バトンタッチした相手が焚き逃げをした場合は、渡した側も連帯責任です。

③放置された炭は元々そこになかったものです。置いて帰ればゴミを置いて帰ったのと同じで不法投棄(犯罪)です。
 →焚き逃げをマナー違反という人もいますが、マナー違反どころか犯罪であることを知る必要があります。不法投棄は5年以下の懲役または1,000万円以下の科料、またはその両方という非常に重い罪になります。炭は資源でありゴミではないと主張する人もいますが、自身で持ち帰り、有効利用するときのみに言えることで、置いて帰れば炭でもただのゴミであり、不法投棄です。

④完成した炭は炭素(元素)なのでこれ以上分解されず、「理論上」永久に土に還ることはなく、ゴミとしてそこにずっとありつづけてしまいます。
 →これを言うと何千年、何万年後に土と同化する、細かくすれば土に還る、土に還らないというのは間違い、肥料になる、土壌改良になる、害はないので石と一緒という「言い訳」をする人が居ますが、炭は放置したらただのゴミです。石と変わらず無害だというのであれば、知らない人が石を自分の家の庭に次々に捨てに来るようなものです。また、土壌改良は定量的に行うことなので、無作為にゴミを捨てていくのとは違いますし、そもそもキャンプ地に土壌改良は必要ありません。少なくとも生きている間に土と同化して無くなることはないゴミなので、それが堆積すればその場所は簡単に使えなくなります。

⑤焚き逃げが横行した場所で炭が堆積すると、雨で洗われて浮きでてきて、そこら中が炭だらけになり、テントを張る場所がなくなります。
 →昔から焚き逃げが横行している場所は、放置したり、埋めて帰ったりされてしまった炭だらけです。雨が降ると、炭は水に浮くので、土が洗われて浮き出てきます。これが悪化すると、とてもキャンプができる状態では無くなってしまいます。酷いところでは、焚き火跡を埋めるタイプの焚き逃げが繰り返され、地中に炭が飽和して盛り上がり、テントも張れないような状態になることもあります。この状態が始まると、片付ける方は土を掘り起こして片付けなくてはならず、非常に面倒なことになります。炭ゴミは自然になくなっているのではなく、必ず誰かが片付けてくれていることを認識しなくてはなりません。

⑥炭を川や海に投棄したり、川の近くで焚き火をして放置すると最終的に海に流れ込み、炭は水に浮いてしまうので海洋汚染となります。
 →一般的には炭は燃やすゴミ、灰は燃えないゴミです。炭を燃えないごみに出してはいけない理由として、ごみの最終処分が海洋投棄という地域があります。そこで海に炭を固形のまま投棄すると、水に浮いてしまうため海洋汚染の原因になると言われています。川に炭を捨てても同じことで、最終的には海に流れ込み海洋汚染の原因となります。

⑦火消しが不十分な場合火災の原因となります。
 →焚き逃げの中でも最も質の悪いのが火が着いたまま、または火消しが不十分なまま帰るパターンです。放火と言われても文句は言えません。信じられないことですが、風に煽られれば草木に引火し、火災になる恐れがあるのは誰でもわかると思います。
 
⑧石を積んだかまどを崩さずに帰ると、車が座礁したり、人が躓いて転んだり、事故の原因になります。
 →直火での焚き火は石を拾ってきてかまどを組むのが定番ですが、終わった後にそのかまどに使った石をもとに戻したり、邪魔にならない所に移動しておかないと、夜、暗いところで人が転んだり、車からは見えない高さなので物損事故につながる恐れがあります。「次の人が使うから」という言い訳をして帰る人が居ますが、次の人に気を使うのであれば、次の人が自由なスタイルでキャンプを始められるように元通りに綺麗にしておいてあげるのが本当の気遣いです。

⑨かまどを作って焚き火をした場合、石が熱で割れて鋭利な刃物のようになることがあり、それを放置すると怪我の原因となります。
 →かまどを作る際にも、石の材質、火からの距離、高さ、火力などをしっかり考えないと、鋭利に割れた石を量産してしまうことになります。これを人が通る所に放置すると他人にケガを負わせる恐れがあります。

⑩ちゃんと処理されていない家具や建築廃材などで焚き逃げをすると、木に刺さっていたネジや釘がのこり、車のパンクや怪我の原因となります。
 →時々、使わなくなった家具や建材を持ってきて焚き火をしている人が居ますが、薪にするプロセスで、金属部品は抜いておく必要があります。また、万が一金属部品が残ってしまっていた場合でも必ず拾って帰らなくてはなりません。

⑪焚き逃げが横行すると管理しきれず野営地が閉鎖されてしまう恐れがあります。
 →焚き火跡の片付けは非常に大変なものです。これを片付けるのには人件費もごみ処理費用もかかります。キャンプ場であれば大きな痛手となりますし、行政管轄であれば閉鎖にするのが一番効率がいいという判断になるのも無理ありません。自分たちの使わせてもらっている場所に感謝の気持ちを持つことが必要です。

⑫焚き逃げは著しく景観を損ないます。
 →せっかくきれいな大自然を満喫しに来ているのに、そこに汚い焚き逃げが点々とあったらガッカリすると思います。面倒くさいから言い訳をして片付けないで帰るのではなく、まずは自分の都合より、周囲の人の気持ちを考えて行動することが大切です。

⑬ゴミは自然になくなりません。必ずその裏で片付けてくれている人がいます。
 →ポイ捨てされたゴミも、焚き逃げの炭も、それが自然に消えて無くなることはありません。知らない人は無くなっていると思うかも知れませんが、それは自然になくなっているのではなく、知らない誰かが片付けてくれているからなくなっています。知らない他人が残していった汚いゴミを片付けてくれている人がいると考えれば、普通は焚き逃げなどできなくなるはずです。

⑭焚き逃げの跡はさらなる焚き逃げを呼ぶ原因となります
 →焚き逃げがあると、そこは焚き逃げしても大丈夫な場所と思われてしまい、焚き逃げの連鎖が始まります。たとえ、炭ゴミだけ片付けたとしても、かまどの放置があるだけで、焚き逃げの連鎖の原因となります。
時々、かまどを「次の人のために残す」「次の人に残しておけばこれ以上増えない」という人がいますが、我々が年中清掃活動をして見てきた現実としては、これが焚き逃げを増やす原因の一つとなっています。
次に来た人がまたそのかまどを使うとも限りませんし、綺麗に使うとも限りません。他人の作ったかまどではなく、自分で作りたいので、放置されているかまどは無視して自分で新たに作ることも少なくありません。また、かまどが放置されているくらいだから、そのフィールドは甘く、そこに自分ひとりくらい焚き逃げをしても問題はないだろうと思う人も出てきます。そうしている間に汚れたかまどだらけのフィールドができてしまいます。
大切なのは徹底的に焚き逃げをなくして、全国どこにいっても焚き逃げが出来ない環境を作り出すことです。

 

焚き逃げは、犯罪であるため、今も昔もやってはいけないことだったと言えばそれまでですが、こうして分解して考えると、どれだけ悪いことなか、よくわかると思います。

では、焚き火をする際に何処に注意をしなくてはならないか、どうやって片付けるかなどが以下の動画にまとめられているので、初心者の方も、ベテランの方も、ご確認をお願いします。