我々が焚き逃げについて言及すると、今でも昔のように「焚き火後の炭は埋めて帰っていいんだ」という人がいます。

自分の所有地であれば当然良いと思いますし、土地の持ち主が許可しているのであればいいと思いますが、大抵の場合は許可のないところで行われている現実があります。

また、炭を埋めて帰る事に関して「土壌改良になる」や「環境破壊にはならない」という人もいますが、土壌改良ならば自身が所有する畑だけでやれば良い事なので、野営地やキャンプ場には必要がなく、ただゴミを埋めて帰るだけの行為となります。また「環境破壊にならなければゴミを捨てていって良いのか。」という基本的な部分も抜けています。

ほんの少しだけ想像力を働かせてもらえれば、その場所でキャンプをする人はその人1人だけではなく、不特定多数の人であり、その人達がみんなそこに炭を埋めていったら、最終的にどうなるかは分かると思います。

我々はそれによる惨状を散々目の当たりにしてきていますから、それがどうなるのか「知っている」のです。
知っているから伝え続けているのです。

炭を埋めて逃げていくだけの人は、その後に起こる悪影響を想像しませんし、知りません。だから今でも「埋めていけばいい」などと言ってしまうのです。

我々が焚き逃げの跡を片付けている様子をSNSでUPすると「やってますアピールするな」と言ってくる人もいますが、これは「やってますアピール」とは言わず「啓蒙活動」と言います。
簡単に言うと、「知らない人に教えてあげることで知ってもらうための活動」です。知ってもらう内容は、基本的な焚き火後の片付け方や、焚き逃げがどれだけの悪影響を及ぼし問題化しているのか、片付ける作業がどれだけ大変な物か、元に戻すのにどれだけ苦労し迷惑しているかなどです。

我々の啓蒙活動を「うるさい」という人がいますが、SNSにはブロック機能が付いているので、見たくないものは見ないで済ませることができます。
世の中が焚き逃げを否定的に捉える風潮になること自体を「うるさい」と思うのであれば、そう思うのは焚き逃げをする人だけだと思いますので、もしそうなのであれば「うるさい」と思われるのはある意味良い傾向なのかも知れません。

また、「ルールだマナーだと言われると息苦しい」という人もいますが、極端な話をすると、「人を殺したら殺人罪で死刑になる恐れがある」というルールがあっても、自分は人を殺す予定が無いので日常生活で死刑を意識することもなければ、死刑に怯えて生きることもないので、息苦しいと感じることなく楽しく生きていくことができます。
一方でそれを息苦しいと感じるのは「既にやっている人」か「その予定がある人」なのではないでしょうか。
元々当たり前の事が当たり前にできる人は、誰がどれだけ啓蒙活動を行っていても、何も気にならずキャンプを楽しむことができます。

実際焚き逃げで何が起こるかを説明すると、沢山の人が炭を埋めて帰れば、土中は蓄積された炭で溢れかえり、雨が降るたびに浮き出てきてその場を汚染し続けます。
酷い所では、焚き火跡を放置したり、炭を埋めたりすることで堆積して地面が盛り上がり、とてもじゃないですが、そこにテントを張れる状態ではなくなります。
「多少なら良いんじゃないの?」という考えの人もいるかもしれませんが、その蓄積でこのような結果を生んでいますので、程度の問題ではありません。
こんな事が続き、全国の野営地はどんどん閉鎖に追い込まれています。

我々は地球環境がどうのとか、良いことをしましょうとか、そんな大それた事を言っている訳ではありません。
単純に、キャンパーはキャンプをする場所がなければキャンプができなくなってしまうので、キャンパーの立場として、その場所で誰もがいつまでも気持ちよくキャンプができるようにしましょうよと言っているだけなのです。

「自分一人なら大丈夫」という意識で、みんなが炭を放置したり、埋めて帰ったら、最終的にその場所ではキャンプができなくなります。
炭の放置が良くないことを説明する際に「炭は土に還らない」という話を補助的にすることがありますが、土に還る還らないに関わらず、炭は放置していくのであればそれはただのゴミです。ゴミを放置して帰ることは不法投棄にあたりますので、土に還るか還らないかの問題や解釈の問題ではなく、そもそも法的に見てダメなことなのです。

情報は時代に合わせて常にアップデートしていく必要があります。
「昔は炭は放置したり埋めたりして良かった」という人もいますが、飲酒運転と一緒で「途中から厳罰化された」というだけで、昔はやって良かったというものでは決してありません。
「昔はやって良かった」のではなく、昔はパソコンもインターネットもなかったので、情報が手に入らなかったり、先のことを想像できなかっただけで、昔からダメなことはダメだったのです。
昔からダメなことを続けてきた結果が今の問題を引き起こしていることを正確に捉えて省みなくてはなりません。

昔やってしまったことは今から取り消すことはできませんので、誰も責める必要はないと思いますが、昔やっていたからと言って、やってはいけないことを今でもやっていいとすることだけは明らかな間違いです。

昔やっていたからと言って、悪影響が明らかになっている今でもその行為を固持する意味はありません。

大切なのは、これからの行動を変えることで、今から変わることは誰にでもできます。
何故ならば、紙ゴミでもプラスチックゴミでも生ゴミでも炭ゴミでも「ゴミは全部持ち帰る」という当たり前のことを当たり前にやるだけのことなので、難しいことは何一つとしてないからです。

昨今、「焚き逃げ」という言葉も一般的になってきており、焚き逃げが良くないことである認知は世間一般に広がっています。
焚き逃げを是とする人はもはや絶滅危惧種のような状況になってきていますので、今後自然淘汰され、それに伴い焚き逃げもどんどんなくなって行くと思われます。

日本単独野営協会は、当たり前のことが当たり前にまかり通り、ソロキャンプの健全な普及という理念のもと、誰もがいつまでも綺麗で安全な野営地でキャンプを楽しむことができるよう、これからもしっかりと活動を続けてまいります。