昔は図書館に行ったり、新聞を読んだりして一生懸命情報を仕入れていましたが、今はインターネットが発達して、だれでも情報が簡単に手に入る、とても良い時代になりました。
ただ、その一方で、昔はそこまで考えなくても良かったのですが、インターネット、特にSNSの普及により、新しい能力が必要とされるようになりました。

その能力とは、ひとりひとりの「情報のプロセッシング能力」です。

情報が簡単に手に入るようになった分、当然目に入る情報量も増えます。
その中には、偏った情報や、ガセネタ、数値的根拠のない情報、裏をとっていない情報などが数多く存在します。
それらをかき集め、見極め、何が正しいのか、自分の力で事実と根拠のある情報までたどり着き、仕上げていく能力が必要になったということです。

時々目にするのは「キャンプは危険だ」という人。

キャンプはアウトドアと言っても、その多くは整備された平場でやることなので、正しい知識をもって行えば、日常生活と大して変わらない程度のリスクしかありませんが、「クマが出た」「薪ストーブで一酸化炭素中毒になった」などの噂が流れただけで、過剰反応を起こし、大げさな注意喚起を行い、キャンプ全体が何か特別に危険なもののように扱われることがあります。

普通に考えて、900万人前後いると言われているキャンプ人口の中で、キャンプ中にクマに襲われて死傷する確率はどれくらいなのでしょうか。ストーブを使って一酸化炭素中毒で死傷した例は何件あるのでしょうか。

私が調べた限りでは、キャンプ中にクマに襲われた例はキャンプ人口の0.1%もなく、純粋に一般的なキャンプを楽しんでいてストーブで一酸化炭素中毒で死亡したという例は、ゼロではないのかも知れませんが、少なくとも見つけることができない程度でした。

当たり前のことではありますが、その当たり前を考えずに、サンプル数がたったの1個の出来事や、センセーショナルなだけで信憑性の薄い情報を盲信してしまい、もっと大きなリスクのあることを無視してそこだけを大げさに取り上げてしまっているのです。

クマや一酸化炭素を遥かに超えるキャンプでのリスクは、間違いなく「行き帰りの交通事故」なのです。

もっと高いリスクがあるのに、そこは目に入らず、クマに襲われた「らしい」、一酸化炭素中毒になった「らしい」というだけで、0.1%にも満たないリスクを、あたかもキャンプにはとんでもないリスクがあるように大げさに騒ぎ立ててしまう。
これこそが偏った情報に踊らされてしまう人の「情報プロセッシング能力の足りなさ」というものの実態なのです。

キャンプの行き帰りで交通事故に遭うリスクは、普段の通勤やお買い物に出かけるのと同じで、日常生活におけるリスクと何ら変わらない訳です。
むしろ頻度から考えると、通勤やお買い物の方が圧倒的にリスクが高いとも言えます。

だから、通勤するのをやめるのでしょうか、お買い物に行くのをやめるのでしょうか。

それは違うと思います。

大切なのは「正しく恐れる」ことです。

交通事故は正しい運転をしていれば、おおよそ安全なのです。だから事故を正しく恐れ、正しい運転方法を学ぶ必要があるのです。
それでも事故に遭ってしまうのは、歩いていたら突然雷に打たれるようなもので、避けることのできない運のような物です。そういったどうにもならない非常に確率の少ない事に怯え、過剰に恐れ、自分の行動を制限してしまうのは、とても勿体ないことです。
キャンプもそれと同じなのです。

いたずらに危機感を煽るだけの情報で、楽しいはずのキャンプが変に勘違いをされてしまうのはとても残念なことです。

正しい知識を持って、正しい経験をして、正しく全力で楽しむ。
大丈夫です。情報プロセッシング能力があれば、キャンプを過剰に恐れることはありません。